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生産性・品質向上にチャレンジ No3

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十勝管内広尾町の鈴木敏文さん(36歳)は2016年、生乳の体細胞数が3万台と町内トップになったこともある若き酪農家だ。08年と10年にはサルモネラ症が発生するなど苦い経験がきっかけとなり、経営改善に前向きにチャレンジしてきた。鈴木牧場の良質乳生産の取り組みについて話を聞いた。

牛の健康は、大地の健康だ!

十勝管内広尾町鈴木牧場 鈴木敏文さん

鈴木敏文さんは開口一番、「牛の健康は、大地の健康だ」と力強く語る。そして、こう言葉をつないだ。「酪農の素晴らしい点は、牛-堆肥-土-草が循環していること。だから、土が健康でなければ牛も健康にならない。大地を健康にするためには、質の良いふん尿(堆肥)が必要だし、それが牧草になってまた牛へと戻る。土に手を掛ければ掛けるほど、良質な牧草が取れるし、牛も健康になる」と。
鈴木さんは現在、両親(文男さん=63歳、節子さん=60歳)と3人で耕地面積70haに総頭数115頭(経産牛55頭)を飼養する。2002年に帯広畜産大学別科を卒業後、民間企業に1年半勤務。その後、米国バーモント州で1年半の酪農実習を経験し、05年に実家の酪農に就農した。当時、大きな目標はなかったものの、08年と10年にサルモネラ症が発生したことで、「このまま酪農人生が終わるのは嫌だ」と一念発起。経営改善に前向きにチャレンジしてきた。

土・草・牛の循環型酪農を追求する鈴木敏文さん

土・草・牛の循環型酪農を追求する鈴木敏文さん

2015年に父文男さんから敏文さんに経営移譲した鈴木牧場

2015年に父文男さんから敏文さんに経営移譲した鈴木牧場

道路縁に立つ牧場看板から牛舎・自宅前に広がる前庭。とてもきれいに整備されて美しい

道路縁に立つ牧場看板から牛舎・自宅前に広がる前庭。とてもきれいに整備されて美しい

当時は、サルモネラ症以外にも周産期病や乳房炎、蹄病なども多発していたことから、まずは①乾乳期管理、②カウコンフォート、③良質粗飼料生産-に取り組んだ。こうした活動を通して、「生乳の体細胞数は健康のバロメーター」ということを理解する。鈴木さんは「牛の乳房内で細菌感染が起こると体細胞数が上がります。体細胞数は、細菌感染の有無や程度を知るための有力な情報源となる。だから、この数値は『乳房の健康指標』であるとともに、生産現場の衛生状況を知るための目安にもなるのです」と説明する。
それ以降、体細胞数を下げるためのチャレンジを開始。具体的には、ルーメンpHのバランスが良好だと牛の抵抗性が高まり、細菌感染の誘因を除去できるため、良質なサイレージ調製・給与を励行。搾乳時にはオキシトシンを意識し、前搾りを6回以上行って乳頭の先端までしっかり拭いた。さらに、酪農にとって重要な牛の子宮、乳頭、ルーメンの筋肉充実のために良質なカルシウム(ミネラル)を給与する-などに取り組んできた。
鈴木さんはまた、「私たちを悩ませたサルモネラ症は“菌”が原因だが、牛の胃袋の中も菌(微生物)によって左右されている。堆肥の発酵、土壌、サイレージ調製なども、すべて菌に影響されている」として、微生物の有効利用についても現場で実践を重ねてきた。

父の代に建設した64頭つなぎ飼い牛舎全景。

父の代に建設した64頭つなぎ飼い牛舎全景。

現在、牛群の平均個体乳量9,000kg、乳脂率3.86%、無脂固形分率8.60%、年間出荷乳量580t

現在、牛群の平均個体乳量9,000kg、乳脂率3.86%、無脂固形分率8.60%、年間出荷乳量580t

2015年に経営改善の事例発表を行い、全国青年農業者会議畜産経営部門で最優秀賞を受賞

2015年に経営改善の事例発表を行い、全国青年農業者会議畜産経営部門で最優秀賞を受賞

このように研究熱心な鈴木さんを支えるのが、09年8月に結婚した妻のなつきさん(41歳)の存在。現在、子育て中のなつきさんは元十勝NOSAIの獣医師。牛に関する知識は豊富だが、「今までは病気を治療するのが私の仕事だったが、敏文さんは病気を出さないように牛を管理することが仕事だよと治療ではなく、予防の大切さを教えてくれた」。
一家が一丸となって健康な牛づくりにまい進する鈴木牧場。将来は「放牧を取り入れ、6次産業にチャレンジしたい。少頭数でも成り立つ酪農を模索したい」と目標を語ってくれた。

2011年に新設した育成牛舎

2011年に新設した育成牛舎

牛を健康に長く飼うことを心掛けるため、哺育・育成期の管理にも力を注ぐ。現在、平均産次数は3.2産

牛を健康に長く飼うことを心掛けるため、哺育・育成期の管理にも力を注ぐ。現在、平均産次数は3.2産

搾乳は朝5時10分、夕方5時30分から7台のミルカーを使って約1時間10分程度で終了する

搾乳は朝5時10分、夕方5時30分から7台のミルカーを使って約1時間10分程度で終了する