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健康で効率的な乳牛の飼養管理

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第2回:牛群検定データ:
乳脂肪率低下時の管理チェックポイント

酪農学園大学獣医学群獣医学類 准教授福森理加

前回は、2026年1月から北海道の牛群検定に導入された「脂肪酸割合データ」、特に乳腺で新規合成される「デノボ脂肪酸(デノボFA)」が、乳牛のルーメン環境や健康状態(難産スコアや空胎日数)をリアルタイムに反映する重要な指標であることをご紹介しました。
検定成績表が手元に届き、「うちの牛群はデノボFAが低い(22%以下)個体が多いな…」と気づいたときには、乾乳期から分娩後3週間における移行期の管理を見直す、分娩後の低デノボ牛に対して糖源の補給を検討するなどの対策で改善が見込まれます。今回は、バルク乳や牛群全体のデノボFAから、乳脂肪率低下を予防するための実践チェックポイントを解説します。

バルク乳中のデノボFAが低い農場の管理上の特徴は?

ニューヨーク州の酪農家を対象に、高デノボFA農場と低デノボFA農場(デノボFAが26% vs. 23.8%)に分けて牛群管理の違いを比較した調査結果を紹介します。個体乳量に農場間の差はありませんでしたが、乳脂肪率は高デノボFA農場が低デノボFA農場よりも高く、乳脂肪率を向上させるためにはデノボFA割合を高く維持することが重要であることがわかります。また、乳タンパク質率も高デノボFA農場の方が高い結果となりました。一見、デノボFAとは無関係に思われますが、乳タンパク質の一部はルーメンの微生物由来のタンパク質から供給されます。そのため、高デノボFA農場は牛群のルーメン機能が良好であり、飼料タンパク質が効率的にルーメン微生物態タンパクに変換されていたのではないかと推測されました。

バルク乳中のデノボFA割合の違いと農場管理方法(Woolpert et al., 2017)

高デノボFA農場 低デノボFA農場 有意差 P値
デノボFA, % 26.0 23.8 あり <0.01
ミックスFA, % 38.9 37.4 あり <0.01
プレフォームFA, % 34.6 38.2 あり <0.01
乳脂肪率, % 3.98 3.78 あり <0.01
乳タンパク質率, % 3.19 3.08 あり <0.01
乳量, kg/日 31.9 32.1 なし 0.91
飼槽幅(cm/頭) 50 39.8 傾向 0.06
飼槽幅を46cm/頭以上
確保している農家割合%
43.7 7.12 傾向 0.06
給飼頻度が
1日2回の農家割合%
68.8 30.7 傾向 0.07
エサ寄せ頻度が
1日5回以上の農家割合%
29.8 77.1 傾向0.05
飼料中油脂含量, % 3.7 4.0 あり <0.01
サイレージ乾物率, % 33.3 42.8 あり <0.01
物理的有効繊維, % 26.8 21.4 あり <0.01
飼養密度が
110%未満の農家割合%
65.3 21.4 傾向 0.08

次に、高デノボFA農場と低デノボFA農場の管理上の違いから、デノボFAを高めるために何が重要になるかを紹介していきたいと思います。

管理ポイント1:ウシは十分にエサを食べているか?

デノボFAの量を増やす大前提は、「ウシがしっかりとエサを食べていること」「ルーメンの機能が健全であること」です。デノボFAの原料となる揮発性脂肪酸(VFA:酢酸や酪酸)は、摂取したエサの炭水化物がルーメン微生物によって消化・発酵されることで作られます。高デノボFA農場と低デノボFA農場を比較すると、低デノボFA農場はウシ1頭あたりの飼槽幅が狭く(50 cm vs. 39.8 cm)、46 cm以上の飼槽スペースを確保している農場の割合も少ないという結果でした。ちなみに、ウシの理想的な飼槽幅は70 cm/頭以上ですので、どちらの牛群もやや狭い印象です。飼槽幅が十分でないと、ウシ間の競合が生まれ、群の中で弱い牛が十分に採食できなくなります。また、競争が生まれるために固め食いが生じ、飼料の急速な発酵によってルーメンアシドーシスのリスクが高まり、デノボFAが低くなる要因となります。
また、高デノボFA農場は1日2回給飼をしている割合が高い傾向がありました。給飼回数が多いことは、採食の動機を高めて摂取量をアップさせるほか、採食タイミングを分散させるのでルーメンの安定化につながります。一方、エサ寄せ回数については低デノボFA農場の方が多く行っている傾向がありました。エサ寄せは給飼と同じく採食の動機を高めるため、デノボFAを高めるのに良い管理と考えられますが、結果は反対となりました。もしかすると低デノボFA農場は給飼量が少なく、少ない飼料をエサ寄せによって効率よく摂取させていたのかもしれません。いずれにしても、一般的にはエサ寄せや頻回給飼はウシの採食量アップやルーメン機能の安定化に寄与するため、デノボFAを高めるために重要です。

チェック:

・給餌スペースの確認:飼料障害や過密によって、特に弱いウシ(初産牛や分娩直後の牛)がエサを食べ損ねていませんか?

・飼料の押し寄せ頻度:常に新鮮なエサがウシの口の届く範囲にあるか、夜間のエサ切れが起きていないかを見直しましょう。

・移行期(分娩前後)の管理:分娩直後は特に採食量が落ち込み、エネルギー不足から体脂肪を激しく燃やしてしまいます(NEFAの上昇)。これがプレフォームドFAを押し上げ、相対的にデノボFA割合を低下させる原因になります。分娩前からの嗜好性の高い飼料給与や、快適な環境づくりが不可欠です。

管理ポイント2:ルーメン発酵は正常か?

エサの「量」が足りていても、ルーメンの環境が悪ければデノボFAは合成されません。ルーメンpHが低い状態(ルーメンアシドーシス)が長く続くと、デノボ合成を強力に邪魔するトランス脂肪酸や共役リノール酸がルーメン内で作られてしまい、デノボFAが落ち込んでしまいます。低デノボFA農場の特徴として、TMR中の物理的有効繊維(peNDF)割合が少なく、4 mm以下の小飼料片が多く含まれていることが挙げられました。

チェック:

・選択採食(えり好み・ソーティング)のチェック:配合飼料などの濃厚飼料ばかりをウシが選び食いし、長い粗飼料を残していませんか?TMRの水分管理やミキシング時間を見直し、均一に食べさせることがルーメンpHの安定につながります。

・粗飼料の質と物理的有効性:反芻を促すための物理的有効繊維が不足すると、唾液の分泌が減り、ルーメンpHが低下します。デノボFAが低いときは、粗飼料の配合比率や質の再検討が必要です。

・過剰な油脂を給与していませんか:過剰な油脂、特に不飽和脂肪酸給与量が多いとデノボFAを低下させ、乳脂肪率も低下する要因となります。

管理ポイント3:牛舎の快適性(カウ・コンフォート)は保たれているか?

意外に見落とされがちなのが、ウシの「寝る時間」です。乳牛は横になって休んでいるときに最も活発に反芻を行い、大量の唾液をルーメンに送り込みます。高デノボ農場は低デノボ農場よりも飼養密度を適正に保っている(110%未満;理想は100%以下です)戸数割合が高いという特徴がありました。

チェック

・飼養密度は適正に保たれ、ウシが横臥している時間が保たれているか:フリーストールの場合、ストール数÷飼養頭数×100が100以下であることが理想。フリーバーンの場合、1頭あたり最低でも10平方メートル以上のスペースがあることが理想となります。

・横臥時間の確保:ベッド(ストールの牛床)が硬い、濡れている、またはサイズが合わないなどの理由でウシの横臥時間が短くなると、反芻が減ってルーメンpHが下がり、結果としてデノボFA低下を招きます。飼養密度だけではなく、ウシが寝ている時間が少ない場合には、ストール構造や牛床環境について確認することが必要です。

・暑熱ストレス対策:夏場は重炭酸塩が失われ、ルーメンアシドーシスを起こしやすくなります。重曹などの給与による緩和も有効手段ですが、最も良い暑熱対策は送風・遮熱などによる環境調整が重要であるといわれています。

以上のように、デノボFA(乳脂肪率)を高く維持する管理ポイントは飼料の成分・調製だけでなく、管理も大変重要であることが示されました。デノボFAが低くなる原因について、何が要因になっているかは農場によってさまざまであることが考えられますが、ひとつひとつチェックして取り入れやすいものから検討してみてはいかがでしょうか?

【参考文献】
Woolpert et al., 2017: Journal of Dairy Science 100:5097-5106.