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酪農の省力化機械

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第2回 自動給餌機
飼料給与の効率化で乳量向上

乳牛の個体乳量を伸ばすには、飼料の効率的な給与体制を構築することが極めて重要だ。「酪農の省力化機械」第2回目は、労働負担の軽減を図りながら、1日のエサやり回数を増やすことができる自動給餌機の導入事例を紹介する。

酪農生産者の日々の労働の中でも、乳牛へのエサやりは最も重要性が高い作業のうちの一つだ。牛がいつでも良質な飼料を食べられる環境を整えることは、個体乳量の増加、ひいては所得の向上につながる。
しかし、酪農生産者にとってエサやりにかかる労働負担は重く、1日の給餌回数を増やすことは、決して簡単ではない。
「省力化と両立しながら、給餌体制の改善を図りたい」
酪農生産者のこうしたニーズに応えようと、現在、全道的に普及が進んでいるのが「自動給餌機」だ。
自動給餌機はエサやりにかかる作業をすべて自動化するため、酪農生産者は労働負担を軽減するのと同時に、1日の給餌回数を容易に増やすことができる。エサ寄せ機能を兼ね備えた機種もあり、乳牛の採食量を格段に高めることが可能だ。

頻回給餌で個体乳量増加

今年4月に稼働を開始した十勝管内陸別町の「株式会社ユニバース」(美濃島弘典社長)。
陸別町農協やホクレンの出資により、搾乳ロボット6台を導入したメガロボットファームとして全国的に名が知られているが、自動給餌機2台の活用を通し、極めて効率的な飼料給与体制を整えているという点でも注目を集めている。

表 (株)ユニバースの概要

表 (株)ユニバースの概要

ユニバースが導入したのは、デンマークのOne2Feed(ワン・ツー・フィード)社が設計・製造した最新鋭の自動給餌機だ。自動エサ寄せ機能も搭載可能で、日本ではコーンズ・エージーが輸入・販売している。

One2Feed社の自動給餌機

One2Feed社の自動給餌機

陸別町農協が搾乳ロボットや自動給餌機を取り入れた最新鋭の牧場を立ち上げたのは、生産基盤の維持・強化もさることながら、深刻な人手不足や過重な労働負担など、日本酪農が直面している課題と将来方向を見据えたことが背景にある。
ユニバースの美濃島社長と大橋広昭副社長、佐藤慎一専務らは「酪農生産者にとっては搾乳ばかりでなく、エサやりにかかる負担も大きい。しかし、自動給餌機を用いれば省力化に加え、飼料の給与やエサ寄せの頻度も増やすことができる。

個体乳量の増加や管理頭数の拡大につながるため、経営上のメリットは極めて大きい。自動給餌機に匹敵する働きをするには、膨大なマンパワーが必要だ」と強調する。

丈夫で大きなトラブルゼロ

ストッカーから自動給餌機に飼料を補充

ストッカーから自動給餌機に飼料を補充

One2Feedの自動給餌機は、二つの縦型オーガーを搭載しているのが特長だ。サイレージの種類に応じた最適なミキシングが可能となっている。コンピューターが重量計測で積載量を制御するため、飼料はムラなく均一に乳牛へと給与される。
給餌機は、牛舎の天井に設置された走行レールに沿って稼働し、左右両側の下部から飼料を排出する。1台で飼槽幅2.8mまで対応可能(オプションのベルトコンベヤーで最大6.0m)。

ユニバースでは2台の給餌機を導入しており、各機が牛舎中央の飼槽通路を走行し、1台が牛舎左側、もう1台が右側の牛群の給餌・エサ寄せを行っている。
給餌機の電源は、走行レールに併走する電源レールから供給される。このため、バッテリー切れによる稼働停止や充電トラブルなどがない点も大きな特長だ。
美濃島社長ら3人は「機械が丈夫なこともあり、運用に当たってトラブルが起きたことはほとんどない。仮に問題があっても、稼働状況は管理用ソフトを通してコーンズ・エージーでも遠隔で確認できるため、原因をすぐに調べてもらえる」と説明する。
給餌機から給与する飼料は、サイレージストッカーから自動で補充される。床板が交互にスライドするウオーキング式フロアで、先にストッカーへと投入したサイレージから給餌機に送り出される。飼料がストッカーの底に残ったり、撹拌されることを防ぎ、品質の劣化を最小限に抑えることができる。

ユニバースでは、自動給餌機2台に加え、ストッカー5台を導入した。搾乳ロボットやアブレストパーラー、乾乳牛用など、用途に応じて使い分けを行い、将来的には配合飼料も自動給餌機で給与する計画となっている。

深夜のエサ寄せで採食量増加

乳牛の採食量が増加

乳牛の採食量が増加

ユニバースでは自動給餌機を活用し、エサやりを1日6回(9時半、12時、16時、17時、23時、2時)、エサ寄せを1時間に1回行っている。一般的な酪農生産者の場合、給餌回数は2回、エサ寄せは5~7回程度というから、その効果は一目瞭然だ。 美濃島社長らは「自動給餌機がなければ、1日の給餌回数を増やすことも、深夜にエサ寄せを行うことも難しい。ユニバースでは乳牛の乾物摂取量が増加し、目に見えて個体乳量が伸びている。酪農生産者の所得向上を図る上で、自動給餌機は極めて有用なツールではないか」と力を込める。

また、「ミキサーをトラクターで引っ張ると、飼槽通路に土砂が入ることがある。自動給餌機はこういった心配がないため、衛生的に飼料を給与できることも大きなメリット」と語る。
ユニバースは自動給餌機の稼働から3カ月が経過したが、現時点では導入して良いことづくめだという。

ただ、一定の初期投資が発生するため、飼養規模と費用対効果については考慮が必要だ。
コーンズ・エージーによると、One2Feed社の自動給餌機を導入する場合、費用は本体やストッカーの台数、走行レールの長さ、牛舎に必要な改修など、各経営体に応じて異なる。
しかし、投資額を除けば、労働負担の軽減や給餌・エサ寄せ回数の増加など多くの利点があり、自動給餌機の導入効果は計り知れない。
美濃島社長らは「ユニバースでは、酪農経験がないスタッフ4人が牧場の作業に従事しているが、搾乳ロボットや自動給餌機で省力化を図っている分、飼養管理の技術向上に労力を割くことができる。牧場運営は想定していた以上に好調で、初年度の目標出荷乳量は2000トン~2500トンまで伸ばすことができそうだ。今後も省力化機械をうまく活用しながら、地域の酪農基盤の維持・拡大に努めていきたい」と意気込んでいる。

陸別町の株式会社ユニバース

陸別町の株式会社ユニバース

右から美濃島社長、大橋副社長、佐藤専務

右から美濃島社長、大橋副社長、佐藤専務