Gloabal site

お問い合わせ

酪農経営お役立ち情報

酪農の省力化機械

印刷する

第4回 Farmnote(ファームノート)
スマートフォンで牛群管理

Farmnoteは、スマートフォン・タブレット・パソコンで使えるマルチデバイス対応のクラウド型牛群管理システム。酪農生産者はどこでも乳牛の個体情報を確認できるほか、スタッフ間でのデータ共有も可能だ。飼養管理の大幅な効率化を促すことができる。

ICT(情報通信技術)の発展に伴い、酪農現場では手軽に牛群を管理することができるスマートフォン向けアプリが、新たな形の省力化ツールとして注目を集めている。

株式会社ファームノート(帯広市、小林晋也代表取締役)が平成26年11月に正式公開した「Farmnote」はスマホのほか、タブレットやパソコンでも利用可能。牛体ごとに疫病や繁殖、作業履歴などを入力・記録することができる。平成28年12月現在の利用農家戸数は、酪農生産者・畜産農家を合わせ全国で1600戸(飼養頭数15万頭)にも上る。

Farmnoteを使えば、酪農生産者はどこでも乳牛の個体情報を確認できるほか、牧場スタッフ間でデータを教諭することも容易で、飼養管理の効率化を促すツールとして全国的に脚光を浴びている。

資料:北海道畜産振興課

Farmnote(サンプル)
※料金プランによって利用できる機能に制限あり

個体情報を集約化

十勝管内上士幌町の村上牧場(村上靖代表)は、年間出荷乳 量約4000トンのメガファーム(表)。平成27年6月にFarmnoteを導入してから、すでに1年以上が経過する。それまでは、事務所と繋ぎ牛舎5棟、哺乳舎にそれぞれパソコンを設置し、牛群を管理していたが、データを集約化できないなどの問題を抱えていた。

牧場の後継者である村上智也副代表は「当時は牛舎ごとのデータを統一することができなかった。このため、牛群全体の概要をつかむことが極めて難しく、何とか対応策を考えなければいけなかった。Farmnoteの存在を知ったのは、そうした時だ」と振り返る。

Farmnoteは、乳牛の個体情報をクラウド・コンピューティング(ネットワーク上のサーバーにデータを保存する技術)で管理する。アプリさえダウンロードしていれば、端末にかかわらず入力した情報を確認することができるため、一本化したデータを牧場スタッフの間で共有することも簡単だ。

村上副代表は「Farmnoteは、牛群データの集約化にはもってこいのツールだった。ちょうど、ガラケーからスマホへの過渡期だったことも大きい。牧場スタッフ全員にFarmnoteを利用できる端末を持たせ、牛群管理体制の一新を図った」と語る。

Farmnoteはスマホが通信可能な環境であれば、どこでも乳牛の情報が確認できるため、「不必要に牛舎に足を運ぶことがなくなり、大幅な省力化につながった」(村上副代表)と言う。

村上牧場の概要

各牛舎で管理していた情報を集約化

各牛舎で管理していた情報を集約化

早期対応が可能に

Farmnoteは、乳牛の個体識別番号や耳標番号、品種、性別、出生日などの基本情報から、種付け回数や受胎率、空胎日数、発情予定日、産次回数を始めとした多様なデータを入力することができる。
牛体ごとの治療内容や作業履歴なども時系列に沿って記録可能で、スマートフォンさえ持ち歩いていれば、メモ帳いらずだ。
村上副代表は「Farmnoteは、スマホのカメラを使って写真を撮ることもできる。口頭で伝えるよりも牛の状態が分かりやすく、早期対応に役立つ。飼養管理の改善・効率化を促すことができる」と力を込める。
Farmnoteの料金プランは、「Free」「Personal」「Standard」の3種類。Freeは無料で上限100頭まで、Personalは1頭当たり月額40円(税抜き)で上限200頭までとなっている。
Standardは無制限の料金プランで、牧場の規模によって費用が異なる。成牛600頭の村上牧場の場合は、年間で総額60万円程度かかるという。
村上副代表は「規模の大小にかかわらず、Farmnoteを導入するメリットは大きい。ただ、データの入力を間違えると、誤った情報がスタッフ全員に伝わってしまうため、ヒューマンエラーについては注意が必要。データの集約化や情報共有のメリットを考えると、スタッフが多いメガ・ギガファームは、特にFarmnoteの恩恵が大きいのではないか」と話す。

トレーサビリティも確保

村上副代表は、Farmnoteには省力化や飼養管理の改善以外にも、多くの可能性があると指摘する。

「乳牛の飼養履歴が記録されるため、安全・安心に向けたトレーサビリティの確保につながるのではないか。6次産業化に取り組んでいるのならば、乳牛の成長記録を消費者に公開することで、牛乳・乳製品に付加価値をつけることも可能だ」と強調する。

Farmnoteはこれまで、酪農生産者の要望に応える形で、継続的なアップデートを行ってきた。過去には、疾病や乳房炎の発生状況をグラフ化する機能などを追加。平成28年8月からは、Farmnoteと連携し、人工知能が発情や疾病の兆候を通知する「Farmnote Color」も発売した。

村上副代表は「Farmnoteのアップデートには期待が大きい。例えば、乳牛ごとの収益が分かるようになれば、牧場にとって非常にありがたい。融資も受けやすくなる。うちの牧場は、Farmnoteを導入してから本当に変わった。酪農経営の改善を促すツールとして、一層進化することを楽しみにしている」と話している。

村上智也副代表

村上智也副代表

パソコンやスマホ、タブレットで利用可能

パソコンやスマホ、タブレットで利用可能