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第2回 牛群検定WebシステムDL

牛群検定WebシステムDLは、「乳検データをうまく利用できない」という酪農生産者のためのお役立ちツール。もちろん、乳検データを使いこなしている人も、今まで以上に農場の長所や課題が見えてくるはず。今回は、同システムの概要について紹介する。

農場の長所と課題が簡単に分かる

皆さんは牛群検定に加入しているだろうか。今回紹介する「牛群検定WebシステムDL」は、牛群検定に加入している人だけが無料で使える情報活用ツールである。
牛群検定は、乳量、乳成分、体細胞数、飼料給与、飼料単価、乳価、繁殖記録などの飼養管理データを毎月1回集計・分析し、「検定成績表」として酪農生産者にフィードバックする事業。現在、北海道では4,247戸(生乳出荷戸数に対する検定普及率74.7%)、34万8,382頭が加入しており、これらのデータが多くの酪農生産者の経営改善に役立てられている。
しかし、経営規模の拡大が進む中で、これまでのような紙ベースでは「頭数が多くて牛を探すのが大変」「紙が多くてまとめ切れない」「過去の帳票保管も大変」などの悩みが多いのも事実。そこで平成26年に、パソコン上で乳検データをいつでも確認・利用できる「牛群検定Webシステム」が開発された。同システムは①検定成績表、②検定終了通知書、③検定日速報-など欲しい帳票と期間を選んで検索すれば、過去のデータや帳票もすぐにダウンロードすることができる。また、各月の集計が終了した時点で成績表ファイルを添付してメール通知する機能もあり、検定情報の利便性が大幅に向上している。
「牛群検定WebシステムDL」は、従来の月1回の検定情報に加え、バルク乳や授精情報等の生産情報をリアルタイムで連結し、「検定情報をもっと便利で喜ばれるデータにして現場に活用してもらおう」と27年にリリースされた。本システムには、生産情報や人と人を連結することをコンセプトとしており、全道の酪農生産者とデータを見比べることで、自分の農場の長所と課題を簡単に探ることができる。
牛群検定WebシステムDLの第1の特長は、「リアルタイムな繁殖管理ツール」であることだ。乳検で報告された記録のほか、人工授精師が全国データベースに報告した授精記録、酪農生産者がシステムに入力した記録を自動的に反映させる。さらに、個体識別情報を使って追加・除籍・分娩も自動的に反映するので、面倒な入力作業は最小限で済む。繁殖データは毎日動くので、これからの管理に役立てることができる。
第2の特長は、「バルク情報との連携ツール」になっている点だ。出荷ごとの乳量、定期検査の乳成分データが自動更新される。こうしたバルク情報が月1回の乳検情報に加わることで、より緻密な牛群管理が可能となる。飼料設計を依頼する人にも簡単に情報提供できるので、これまで以上のバックアップが期待できるかもしれない(バルク情報の利用について、情報提供に関する同意、承諾書などの手続きは別途、北海道酪農検定検査協会へ連絡が必要)。
第3の特長は「生産情報の視覚化ツール」ということだ。乳検情報は「数字が多くて使いこなせない」「速報しか使えていない」という悩みを持つ人には、このシステム自体がデータ活用を全力でサポートする。農場の長所や隠れていた課題がきっと見つかるはずだ。全道の農場のデータと比較して、自分の農場の立ち位置をぜひ確認してみたい。
上川郡下川町で現在、耕地100haに総頭数450頭(経産牛270頭)を飼養する有限会社松岡牧場の松岡宏幸代表は、同システムの開発にかかわった上川北NOSAI(現在の北海道中央NOSAI)の獣医師の紹介をきっかけに牛群検定WebシステムDLを使い始めた。

松岡宏幸代表

松岡宏幸代表

有限会社松岡牧場の全景

有限会社松岡牧場の全景

松岡代表は「最大のメリットは、スマートフォンでいつでもどこでも牛の個体情報を確認できるようになったこと」と語る。例えば、人工授精師に授精してもらっているとき、隣に発情の牛がいたら、これまでは繁殖台帳を確認しに事務所までいちいち戻らなければならなかった。飼養頭数がこれだけ多いと個体情報を記憶しきれないし、ちょっと調べるにも手間と時間がかかった。しかし、牛群検定WebシステムDLを使えば、すべての牛の個体情報がスマートフォンで簡単に確認することができる。

4~5頭の分娩・授精入力なら数分で済む

4~5頭の分娩・授精入力なら数分で済む

また、松岡代表は「個体識別情報とつながっているところもいい点」と指摘する。同牧場では、分娩した牛をその日のうちに個体識別センターに報告しているが、「センターに報告さえしておけば、何番の牛がいつ分娩したかが自動的にDLに入っている。万が一のときにも分からなくなりにくくて便利」と説明する。

さらに「以前は検定の準備を手書きでしていたが、パソコンからデータを印刷してそのまま検定員に渡すだけでいいので、牛群検定にかかわる時間が大幅に短縮した。また、経営のどこが長所で、どこが短所かも見やすく表示されるので、改善すべき点も一目瞭然」と太鼓判を押す。ただし、「バルク情報との連携に関してはまだ十分に生かし切れていない。この部分を含め、同システムを最大限に活用できればもっと使い方が広がると思う。システムよりも、私の努力の方がまだまだ足りないかな…」と言って笑った。

牛舎でタブレットを見せ、指導者からアドバイスを受けることも可能に

牛舎でタブレットを見せ、指導者からアドバイスを受けることも可能に

牛群検定に加入している人だけが無料で使える牛群検WebシステムDL。牛のさまざまな個体情報を確認できるほか、自分の牧場が地域や道内のどのレベルにあるのかもすぐに調べることができる。経営改善・強化のため、すべての酪農家に活用してもらいたいツールだ。