よつ葉のふるさと訪問記(4) 宗谷編
冬は-30℃、夏は+30℃にもなるという中頓別町。寒暖差ははげしいものの、山に囲まれているため直線にしてわずか20km離れるオホーツク海からの風が直接吹き込んでくることは少なく、比較的穏やかな気候の土地です。
山と海から恩恵を受ける土地
今回訪れた敏音知(ぴんねしり)は、町内にある酪農生産者のうち、10戸ほどが集まる地域です。
町に、地域に、新しい風を吹き込む役割
姉歯義宣(よしのぶ)さん
姉歯牧場(あねはぼくじょう)の姉歯義宣さんは、生まれも育ちも敏音知。2代目として、家族と共におよそ170頭の牛を飼育しています。 「この町は、良くも悪くも保守的なところがある。だから、新しいことを積極的に取り入れていかなきゃっていうのは、若い時からずっと思っていました」と姉歯さん。新しい動きは自分だけでなく地域への刺激にもなり、酪農の町としてさらに活性化していくことにもつながると考えています。実際にその言葉通り、町内で真っ先にフリーストール式の牛舎を建てるなど、いつも先駆的に動いてきたそうです。
地域の将来を優先した決断
姉歯さんは、2011年に開業したTMRセンター(以下、センター)の代表も務めていました。
TMRとは、粗飼料と濃厚飼料を適切な割合で調整した飼料のこと。TMRセンターは、畑の管理から牧草の刈り取り、餌の配合、そして各酪農生産者に配送するところまでを担う施設。姉歯さんが代表を務める「株式会社ディリーソウル中頓別」のほか、宗谷管内には14施設があります。(2024年1月現在)
「後継者がいない。労働力が足りない。農機械が高額で買えない。地域全体が抱えていた諸問題を解決するために、10軒が集まって会社を起こしたんです。
参加するかどうかしばらく悩んだけど、自分の家の経営だけじゃなくて地域全体を考えると、必要だと思ってね。現状打破のためにはやはり、新しいことをしよう、と」。
得られた成果と、これからの課題
センターができたことで、牛の管理に労力を費やせるようになり、年間を通して安定した餌を与えられるようになりました。その結果、各酪農生産者での乳量が増え、乳質も格段に良くなったそうです。「間違いなく地域がいい方向に向かってる。雰囲気がすいぶん変わったんです。決断は正しかったと思いますね」。そして、今後の課題としては「さらに乳質が良くなったこの生乳を、信頼できる商品として消費者に届けたい」とのこと。
現在、宗谷工場で主に製造されているのは業務用の全粉乳。姉歯さんをはじめとする生産者は、自分たちの生乳が最終的にどのような商品に姿を変えているのか知りたいと思っています。酪農生産者としてのモチベーションを高めるためにも、消費者とのつながりを感じたいというのが今の願いです。
エピソードフォト
「とにかく牛舎にいる時間を長くすることが一番」と話す姉歯さん。牛を観察することに重点を置いています。
「4歳まではここに住んでいたんだよ」。今は物置になっている牛舎の2階。
姉歯牧場(あねはぼくじょう)
所在地 | 枝幸郡中頓別町 |
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飼養形態 | タイストール |
出荷乳量 | 850t (2023年度実績) |
飼養頭数 | 120頭 |
耕地面積 | 200ha |
姉歯牧場で搾られた生乳は、よつ葉乳業 宗谷工場へ運ばれます。
宗谷工場(浜頓別町)
よつ葉乳業の工場としては最も北にあり、緑豊かな地域に位置しています。おもに製造しているのは全粉乳(生乳から水分を除き、粉末状にしたもの。ホワイトチョコレートなどの菓子原料、コーヒー飲料などに用いられます。)とゴーダチーズです。
宗谷工場はこんなところ
野生動物の行き交う森がすぐそばに
同じ北海道内でも、自然が豊かであるという点においては、他の工場と比べてひときわ環境に恵まれています。東にオホーツク海、西にはクッチャロ湖。オホーツク海と工場のあいだには、ベニヤ原生花園が広がり、初夏になると色とりどりの花が咲き乱れます。
安定した生産を可能にする設備
宗谷地域の生乳と海水塩で丹念につくりあげた限定商品『宗谷ゴーダ』を製造しています。JAひがし宗谷、JA中頓別町、JA宗谷南の各Aコープ店舗のみで販売される地産地消な逸品です。
寮のお昼ごはん
(各自でご飯と汁物をよそう)
工場まで歩いて3分!唯一の社員寮
宗谷工場にのみ併設されている社員寮。宗谷は時に、数m先も見えないほど吹雪くことがあるという過酷な土地です。いざという時には、帰宅できなくなった社員の避難所になることも。
宗谷工場
工場の所在地 | 枝幸郡浜頓別町智福 |
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工場の広さ | 233,870m2(東京ドーム約5個分) |
主な製造品目 | 全粉乳(業務用)・ナチュラルチーズ |
見学対応の有無 | 見学対応あり。 平日(月~金)9:00~12:00・13:00~17:00 土日祝日、お盆期間、年末年始はお休みです。 事前電話予約制:TEL: 01634-2-2332 (3日前までにお電話ください。) |