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生産性・品質向上にチャレンジ No1

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生乳の生産性と品質を向上させることは、酪農経営を健全に発展させるための第一歩だが、なかなか一朝一夕にはいかない。成功農家はいかにして生産性と品質向上にチャレンジしてきたのだろうか。

DMI向上のために緻密な管理を徹底

根室管内別海町株式会社 日野ファーム

根室管内別海町の株式会社日野ファームは、代表取締役の日野裕一さん(45歳)と場長の栄二さん(43歳)の兄弟が中心となり、現在総勢6人のスタッフで耕地198haに総頭数290頭(経産牛150頭)を飼養する。

社長の日野裕一さん(右)と場長の栄二さん

社長の日野裕一さん(右)と場長の栄二さん

150頭規模のフリーストール牛舎。飼槽をレジコン施工するなど、牛に餌をたくさん食べてもらうために環境改善を行った

150頭規模のフリーストール牛舎。飼槽をレジコン施工するなど、牛に餌をたくさん食べてもらうために環境改善を行った

栄二さんがUターン就農したのは3年前の2014年のこと。そこから同牧場の経営改善が本格的に始まった。栄二さんは鉄鋼会社に長年勤務していた経験から、まず牧場の『行動指針』を作成する。①「ABCの遂行」(当たり前の事を馬鹿にしないでちゃんと行う)、②「5S実践」(整理・整頓・清掃・清潔・躾)、③「3Aの遂行」(焦らない、慌てない、諦めない)、④「報連相の実行」(1人判断行動しない)-というものだ。
その上で牧場の課題を知るために、15年度の牛の淘汰原因を調べてみた。すると、特に3産以上で乳房炎や繁殖障害、肢蹄病、周産期病による淘汰が多発していることが分かった。フリーストールで高泌乳を求めるあまり、濃厚飼料の多給によって四肢の病気や周産期病が併発。受胎率の低下が起こり、泌乳後期には過肥になるという悪循環に陥っていたのだ。
「粗飼料の品質不良と採食量の低下は、牛の健康状態を維持するためにはまずい要素だとあらためて感じました」と言う栄二さんは、DMI(乾物摂取量)を向上させるための要因分析に取り組む。そして「環境」「牛群」「作業」「飼料」の4項目を設け、それぞれ項目をさらに細分化して問題点を洗い出した。
「例えば飼料。最初に『飼料用スコップでこのぐらいの量』とアバウトな感じで教わったが、飼料設計では何g、何kgと細かく記載されている。そこでまず『餌の重さをしっかり量ってみよう』というところから始めました」と苦笑する。TMRの中身を時々分析するとともに、飼料設計は2週間おきに実施。サイレージ調製では切断長を12~13mmにし、スタックサイロ容積の2倍以上の草を入れてダンプで十分に鎮圧して品質の向上に取りくんだほか、溝に汚れがこびり付いて悪臭を発していた飼槽をレジコン施工するなど、「牛に餌をたくさん食べてもらうためにはどうすればいいか」をじっくりと考え、一つ一つ着実に実行に移してきた。また、泌乳ステージによるBCS(ボディーコンディションスコア)のばらつきをなくすために2群TMRも導入した。
その結果、17年には14年対比で経産牛1頭当たり乳量は9837kgから1万374kg(105%)に、年間出荷乳量は1360tから1600t(118%)に増加。成分的乳質も乳脂率4.0%、無脂固形分率8.8% 乳タンパク質率3.3%レベルを維持している。
栄二さんは「とにかく何でもやってみようという気持ちだったので、酪農を知らないことが結果的にプラスに働いた。それもこれも、ホクレンや農協など周囲のバックアップがあったからこそ。今後はこの乳量・乳質を安定して継続させるために努力したい」と気を引き締めていた。

2008年に導入した10頭ダブルのパラレルパーラー

2008年に導入した10頭ダブルの
パラレルパーラー

バンカーサイロは幅9m×40mを4基設置する

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バルククーラーは10t規模

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