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生産性・品質向上にチャレンジ No6

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新天地の宗谷管内枝幸町で、理想の酪農の姿を追い求めて汗を流す廣山辰徳さん(31歳)、智尋さん(28歳)夫婦。今回は、「将来は町内トップの年間出荷乳量を目指したい」と元気に語る廣山さん夫婦に、牧場移転の理由や良質乳生産のポイントについて聞いた。

新天地で規模拡大と良質乳生産に挑戦

宗谷管内枝幸町 合同会社 枝幸ヒロヤマファーム 廣山辰徳さん、智尋さん

今年7月、第三者継承により帯広市から宗谷管内枝幸町に牧場を移転した廣山辰徳さん、智尋さん夫婦。現在、耕地面積120haに総頭数250頭(経産牛160頭)を飼養。この地で、理想とする自給飼料を主体とした大規模経営への挑戦を始めたばかりだ。

2017年12月に結婚した廣山辰徳さん、智尋さん夫婦。1牛を長く飼う、2後継牛を確保する、3死産や乳房炎などによるロスを減らす―ことを経営のポイントにしている

2017年12月に結婚した廣山辰徳さん、智尋さん夫婦。①牛を長く飼う、②後継牛を確保する、③死産や乳房炎などによるロスを減らす―ことを経営のポイントにしている

牧場移転の理由について辰徳さんは「帯広は気候も土壌も良く、農業をするには最高の場所だが…」と前置きした上で、「老朽化した牛舎更新を計画していたが、規模拡大したくても帯広市内では土地代が高く、遊休地もほとんどない状態。飼養規模に見合った草地を確保できなければ、自分が目指す自給飼料を主体とした長命連産の酪農を実現することも不可能。ちょうどその頃、ここ枝幸町の大規模農家が離農する話を聞いた。将来を見据えていろいろ考えた結果、新たな土地で第一歩から酪農にチャレンジすることを決意した」と語る。
2018年12月から研修を兼ねて同牧場に移り、今年7月からフリーストールやパーラーなどはもちろん、草地も牛も従業員(3人)もすべてそのままの形で受け継いで経営を再スタートさせた。経営規模は帯広時代に比べ、草地は30haから120ha、経産牛は40頭から160頭、年間出荷乳量は400tから1300tへと大幅に拡大した。辰徳さんは「まずは経営基盤を安定させることが大切」と気を引き締めるとともに、「将来は町内トップの年間出荷乳量を目指したい」と目標を語る。

牛舎は、100頭規模のフリーストールが2棟。1棟は50頭分を乾乳用として使用。現在、1頭当たりの平均乳量は約9,000kg、乳脂率3.9~4.0%、無脂固形分率8.7~8.8%

牛舎は、100頭規模のフリーストールが2棟。1棟は50頭分を乾乳用として使用。現在、1頭当たりの平均乳量は約9,000kg、乳脂率3.9~4.0%、無脂固形分率8.7~8.8%

パーラーは、6頭ダブルのへリングボーン。搾乳時間は搾乳者3~4人で朝5時、夕方4時から行い、約2時間で終わるという

パーラーは、6頭ダブルのへリングボーン。搾乳時間は搾乳者3~4人で朝5時、夕方4時から行い、約2時間で終わるという

フリーストール牛舎外観。手前がパーラー施設

フリーストール牛舎外観。手前がパーラー施設

フリーストール牛舎から少し高台にある育成舎

フリーストール牛舎から少し高台にある育成舎

そんな廣山さん夫婦のモットーは「長命連産」の牛づくりだ。そのためには、「牛をしっかりと見ることが大切。そして、手間を惜しまないこと」と辰徳さんと智尋さんは口をそろえる。この精神は、良質乳生産にも好影響を与えている。「飼料や牛床環境なども重要だとは思いますが、しっかりと乳頭を拭いて、きちんとミルカーを付ける。ただ、その基本中の基本を手を抜かずに重点的にやっています」と辰徳さんが語れば、「抗生物質を入れたり、出荷できない生乳をバケットに搾っても1円にもならない。治療に掛かる手間とお金を考えたら、予防に時間とお金を掛けた方が経済的にも精神的にもお得」と智尋さんが話を続ける。
基本的なことを手を抜かずに継続した結果、帯広時代には20万個レベルだった体細胞数が5万個程度まで下がった。現在の牛群でも、牧場継承直後は30万個レベルだったが、20万個以下まで減少したという。さらなる良質乳生産に向けて廣山さん夫婦の挑戦は続くが、2人は「周囲の協力があってこその現在の経営。応援して送り出してくれたJA帯広かわにしの有塚利宣組合長や、快く受け入れてくれたJA宗谷南の向井地信之組合長をはじめ、両地域の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです」と深く頭を下げた。

育成舎の左側は12カ月齢以上の子牛を飼養する(約50頭規模)

育成舎の左側は12カ月齢以上の子牛を飼養する(約50頭規模)

育成舎の右側は月齢によって3群に分けて飼養している

育成舎の右側は月齢によって3群に分けて飼養している

育成舎の裏側に広がる草地

育成舎の裏側に広がる草地

堆肥舎は、フリーストール牛舎と育成舎の間に設置されている

堆肥舎は、フリーストール牛舎と育成舎の間に設置されている