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生産性・品質向上にチャレンジ No2

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1998年から酪農専業の道を歩み始めた帯広市の中村牧場。
2001年に既存牛舎を大幅にリフォーム。牛の安楽性、飼養面、栄養面の改善に取り組み、生乳の生産性・品質向上に大きな成果を上げてきた。中村寿夫さん(64歳)に経営改善のポイントを聞いた。

牛を健康に飼うため、安楽性・飼養・栄養を改善

帯広市清川町中村牧場 中村寿夫さん

帯広市で耕地35haに総頭数68頭(経産牛48頭)を飼養する中村牧場経営主の中村寿夫さん。1973年に帯広農業高校を卒業後、実家の酪畑複合経営に就農。2年後の75年には、父の鐡夫さんが36頭牛舎を新設した。当時、酪農部門は経産牛20頭程度、個体乳量も7000kgというレベルだった。「当時は父の作業を手伝うことだけで精いっぱい」と語る中村さんが、酪農専業に向けて検討を始めたのは90年のこと。蹄病に悩んだこともあり、「牛はやっぱり土の上を歩かせなきゃ駄目だ」と放牧を開始。一方、畑作(小豆、ビート)の仕事も重労働で、「酪農との両立は困難」と判断。98年には酪農専業に経営転換する。
酪農専業に踏み切ったからにはより一層、収益性の高い経営を確立することが必要になる。そこで、本格的な経営改善に取り組むことを決意。「経営を良くするためには牛が健康であることが大切」と、2001年に牛舎リフォームに着手する。酪農関係の資料を参考に、①換気、②牛床、③繫留、④飼槽、⑤給水-などの牛舎構造の改善を実施。
具体的には、暑熱対策のためにトンネル換気を導入したほか、後乳房損傷対策や飛節腫れ防止のために牛床の延長(165cm→175cm)とパスチャーマットを設置、繋留ではスタンチョンからニューヨークタイストール+パーテーションに変更、飼槽はレジコンを施工、給水は配管内径を拡大し、中央通路には転倒防止のためにゴムマットを敷いた。ただ、中村さんは「安楽性は牛の健康の基本部分。適切な管理や栄養が伴わなければ、牛の能力を100%発揮させることはできない」と強調する。

牧場看板の前で。前列が寿夫さん、直子さん(62)夫婦、後列は後継者の真大さん(32)、奈央さん(30)の若夫婦

牧場看板の前で。前列が寿夫さん、直子さん(62)夫婦、後列は後継者の真大さん(32)、奈央さん(30)の若夫婦

牧場看板から牛舎・自宅までの通路周辺もきれいに整備されており、牧場景観はとても美しい

牧場看板から牛舎・自宅までの通路周辺もきれいに整備されており、牧場景観はとても美しい

牛舎内・牛体もとてもきれいで、通路や壁には殺菌効果のあるドロマイトを毎年散布している

牛舎内・牛体もとてもきれいで、通路や壁には殺菌効果のあるドロマイトを毎年散布している

牛舎リフォームの際、暑熱対策としてトンネル換気を採用した

牛舎リフォームの際、暑熱対策としてトンネル換気を採用した

そこで管理面では、乾乳期・泌乳期の適正飼養を実施。ほかにも、ステージ別BCSの導入をはじめ、粗飼料分析・栄養設計を基にした飼料メニューの作成や堆肥を活用した良質粗飼料生産、夏季の夜間放牧、年2回の削蹄などにも取り組んだ。
栄養面では、特に良質粗飼料を確保・給与するため、嫌気性微生物資材を活用した発酵堆肥の生産と利用を実践。中村さんは「発酵堆肥を利用してから化成肥料が大幅に減った。それによりサイレージの発酵品質が向上し、牛の食い込み量が増えた」と大きな手応えを感じている。
こうした努力の結果、個体乳量は1万kgを超え、乳成分は乳脂率3.71%、無脂固形分率8.55%。特筆すべきは衛生的乳質で、細菌数は1000個以下、体細胞数は9万以下を長年維持している。乳飼比は24.0%、酪農所得率は34.7%である。
中村牧場の長命連産性も見逃してはいけない。平均産次数は2.8産。生涯乳量10万kgの牛を、これまでに7頭誕生させていることも注目すべき点だ。
「経営改善は簡単なことではない。簡単ではないから、それをクリアできたときの満足感は大きい。そこが牛飼いの最大の魅力」と中村さん。「酪農経営にこれでいいということはない。これからも経営をより良くするためにチャレンジしていきたい」と笑顔で語っていた。

生乳処理室も整理整頓されており、ミルカーの消耗品なども定期的に交換している

生乳処理室も整理整頓されており、ミルカーの消耗品なども定期的に交換している

「良質な土壌で生育した粗飼料は糖分も高く、良いサイレージ発酵につながる」と中村さん

「良質な土壌で生育した粗飼料は糖分も高く、良いサイレージ発酵につながる」と中村さん

中村牧場の航空写真

中村牧場の航空写真