Gloabal site

お問い合わせ

酪農経営お役立ち情報

生産性・品質向上にチャレンジ No7

印刷する

飼料内容を見直し、コストと生産性を同時に改善

十勝管内士幌町 石垣牧場 代表取締役 石垣昇さん

十勝管内士幌町で耕地面積45ha(借地3ha)に総頭数160頭(経産牛100頭)を飼養する石垣牧場の石垣昇代表(42歳)は「人間は学んでいる時が一番幸せ。もっと学ぶ時間を増やしたい」と意欲的に語る。作業効率を高め、生産性を上げるさまざまな工夫をしてきた石垣代表に、その取り組みの一端を聞いた。

「知らないことを学び、チャレンジしている時が人間は一番幸せ」と語る石垣代表。この精神が、酪農経営の好成績にもしっかりと結び付いている

「知らないことを学び、チャレンジしている時が人間は一番幸せ」と語る石垣代表。この精神が、酪農経営の好成績にもしっかりと結び付いている

2000年に酪農学園大学酪農学科を卒業後、鹿追町デーリィーサービスカンパニィで約2年間、酪農ヘルパーとして働いた経験を持つ石垣代表。そこで学んだのは「成功は報酬を、失敗は学びを教えてくれる」ということだ。
この言葉を胸に、02年6月に実家の酪農に就農。当初は、父(銀次郎さん=70歳)と経営に対する考え方の違いに悩んだこともあったが、自分のやりたい酪農をじっくりと温め、経営移譲を受けた13年からはコスト削減と同時に生産性を高める経営に向けて前向きに挑戦を続けてきた。
石垣代表が目指す酪農は、個体管理を重視し、科学に裏付けされた精密酪農だ。「牛は生き物だから、飼料メニューや飼養管理の良し悪しに敏感に反応する」という石垣代表は土づくりと同時に、コンサルタントの協力を得て飼料設計の改善に取り組んだ。
具体的には、搾乳後期牛は過肥にならないように餌の量を調整したり、乾乳期は前期・後期でメニューを変えるなど個体ごとに飼料内容を見直した。その結果、低カルシウム血症と第四胃変位が劇的に減り、乳量は目に見えて増加した。「自分がやっていることに間違いはない」と確信した石垣代表はこうした成功体験が自信となり、ますます意欲とやる気を高めていく。

2013年10月に新築した92頭牛舎。「個体管理をしっかりと行いたい」という希望から、敢えてつなぎ飼い牛舎を選択した

2013年10月に新築した92頭牛舎。「個体管理をしっかりと行いたい」という希望から、敢えてつなぎ飼い牛舎を選択した

牛にとって快適な環境と作業の効率化を考えた牛舎内。特に、飼料はパソコンと連動した自動給餌器で個体ごとの配合給与を実現。コスト低減と省力化を図っている

牛にとって快適な環境と作業の効率化を考えた牛舎内。特に、飼料はパソコンと連動した自動給餌器で個体ごとの配合給与を実現。コスト低減と省力化を図っている

搾乳は朝4時半、夕方4時から、妻の尚美さん(42歳)と技能実習生と3人で行う。ユニット8台を使い、1時間15分程度で終了するという

搾乳は朝4時半、夕方4時から、妻の尚美さん(42歳)と技能実習生と3人で行う。ユニット8台を使い、1時間15分程度で終了するという

特に最近、熱心に取り組んでいるのが“微生物”の活用だ。「酪農は循環が大切だいわれるが、私は微生物を良い状態で循環させることが重要だと思っています。土、植物、サイレージ、牛の体内、ふんなどの微生物をどうコントロールするか…。そうしたことにじっくりと取り組んでいます」と語る。実際、牛の腸内フローラを整えようと活性誘導水やトレハロースなどを給与したところ、牛の健康状態が良くなり、年間を通して乳成分値が変わらなくなった。また、ケトン体や趾皮膚炎(PDD)の数値や割合も着実に減っているという。
こうした実践を通して分かったことは「どこか一つがずば抜けて良くても好成績にはつながらない」ということだ。石垣代表は「ドベネックの桶の理論と一緒で、生乳の生産性や品質は手を抜いた一番壁の低いラインで結果が出てしまう。つまり、土・草・牛に関連するすべてで高いレベルを維持することが重要になる」と力説する。

微生物の活用効果で、バーンクリーナーから排出されたふん尿集積所でも臭いはほぼない

微生物の活用効果で、バーンクリーナーから排出されたふん尿集積所でも臭いはほぼない

古い牛舎は子牛用牛舎として有効活用している。3カ月齢以上は預託牧場に預けている

古い牛舎は子牛用牛舎として有効活用している。3カ月齢以上は預託牧場に預けている

バンカーサイロは幅7.2m×奥行40m×高さ2.4mのものが6基並ぶ

バンカーサイロは幅7.2m×奥行40m×高さ2.4mのものが6基並ぶ

試行錯誤しながらもチャレンジを続けてきた結果、現在は平均乳量1万kg、乳脂率4.17%、無脂固形分率8.89%、体細胞数11万2,000個という牛群を作り上げた。
「飼料面に関してはある程度手応えつかんだので、今後は足腰の強い牛づくり、長命連産を目指した遺伝的改良に取り組んでいきたい」と語るとともに、「将来は従業員を増員する予定なので、みんなに楽しく仕事をしてもらうための心理学的なものも学んでいきたいな」と優しい笑顔を浮かべる。
勉強熱心な石垣代表のチャレンジは今後もまだまだ続く。

電車の部材を払い下げてもらい、独自に作成したバンカーサイロの雨除け屋根

電車の部材を払い下げてもらい、独自に作成したバンカーサイロの雨除け屋根

何事にも一生懸命に取り組む石垣代表。事務所の一角には、子供たちと作成したマジックハンドや輪ゴム鉄砲などが並ぶ

何事にも一生懸命に取り組む石垣代表。事務所の一角には、子供たちと作成したマジックハンドや輪ゴム鉄砲などが並ぶ