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酪農の雇用対策

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少子高齢化が進む中で、酪農の生産現場でも人手不足が深刻化している。人材の確保・育成が経営の将来方向を左右する時代になってきた。そこで、今回から酪農における雇用の課題と対策について紹介する。

人事評価制度で成長をサポート

農事組合法人大雪牧場(上川管内上川町)

公務員並みの待遇を!

「町内で一番の職場に…!」。農事組合法人大雪牧場の鈴木秋男組合長の表情は明るい。
上川管内上川町で耕地200haに総頭数700頭(経産牛400頭)を飼養する同牧場では現在、構成員4人、正職員5人、契約職員1人、外国人実習生2人、アルバイト1人の合計13人で経営を切り盛りしている。
鈴木組合長は酪農の雇用問題について「人材の確保が難しいのは分かっています。だからこそ、安心して長期間働いてもらえるような組織と体制づくりが大切なんです。当牧場で働くスタッフには公務員並みの待遇を用意したい」と力強く語る。だが、こうした考えになるまでにはさまざまな心の葛藤があった。
鈴木組合長は「当牧場も平成22年までは“ブラック”と呼ばれても仕方ない状態でしたね」と苦笑する。乳牛の飼養頭数が増え、スタッフの搾乳作業や労働時間がいつの間にか長くなっていたが、「酪農の仕事とはそんなもの」と考え、「ほかの牧場も大きな差はない」と当初は大きな問題とは考えていなかった。
しかし、やるべきことはやっているのに、それが利益につながらないと気づき始める。そして、質の高い仕事をしてもらうためにはそれなりの待遇が必要だと理解する。「給料は安い、仕事も面白くないのでは逃げ出してしまいますよね」。
その後、同牧場では「脱酪農」「ネクタイをして搾乳をしよう」というキャッチフレーズの下、役場や一般企業と差がない職場づくりに着手する。「全員の目標を同じに設定し、その手法についてはそれぞれが考え、行動してもらい、1人1人が小さなリーダーという自覚を持つようにしてもらいました」と当時を振り返る。

一から勉強して体で覚える

その結果、安定して利益が出せるようになった。具体的には、スタッフの個体管理のレベルが高まり、廃用牛や分娩事故などが急速に減った。日乳量も1頭当たり29kgからコンスタントに30kgをオーバーするようになった。乳質も乳脂率3.95%、無脂固形分率8.90%と高品質な牛乳が安定的に生産できるようになった。鈴木組合長は「構成員とスタッフの考え方が一致し、それぞれがしっかりと行動できるようになった成果」と目を細める。
スタッフの大半は酪農未経験者だが、全員が鈴木組合長を信じ、前向きに頑張ってきた。

毎週月曜日のミーティングは真剣そのもの

毎週月曜日のミーティングは
真剣そのもの

こうして貴重な人材に成長したスタッフに長く勤めてもらうため、同牧場では「一から勉強して体で覚える」をモットーに人事評価制度を導入している。
正職員の1年目は搾乳・除ふんを中心とした「一般職」からスタート。その経験と技術のレベルに合わせて、酪農にかかわるすべての仕事を担う「一般総合職」、さらに酪農経営にかかわるすべての仕事を行う「経営総合職」とレベルアップしていく。

作業に汗を流す構成員

作業に汗を流す構成員

待遇面では社会保険はもちろん、年1回の昇給のほか、賞与は昨年度実績で年5カ月分。また、配偶者・子供手当、超勤手当、衛生管理手当などの「通常手当」に加え、燃料手当、勤務年数に応じた勤務年手当などの「特別手当」も支給している。さらに、勤続10年以上のスタッフには退職金制度も用意している。休日も5~10月は週1日、11~4月は週2日のほか、夏休み・冬休みも合計7日を確保するなどスタッフを精神的・肉体的にリフレッシュさせることにも配慮している。

若い力に期待

今年1月から同牧場で働いている髙橋諒さんは、「生き物が好きで関東から北海道にやって来ました。ここの牧場は勉強になることがたくさんあって楽しい。今は除ふんや哺乳全般の仕事がメインですが、親牛の治療についても先輩から教わっています。知らないことが学べるので、とてもやりがいがあります」と笑顔で牛舎に向かっていった。
一方で現在、同牧場では地元高校を卒業した若者を積極的に採用する計画を進めている。
「高校卒業後の4年間は、役場と同等レベルかそれ以上の待遇を保障する。将来の目標が見つからない若者に、その4年間で自分のあるべき姿を模索してほしい。4年後には当牧場に就職してもいいし、自分のやりたいことが見つかれば他産業で働いてもいい。ここで酪農の仕事で汗を流し、自分と向き合い、将来の自分を考えてほしいのです」と鈴木代表。
今年4月にも1人、高校を卒業したばかりの若者が同牧場の新たな仲間に加わった。若い力の存在は牧場全体を明るくし、活気に満ちた雰囲気にしてくれる。

年間休日100日が目標

鈴木秋男組合長

鈴木秋男組合長

「スタッフ全員が仕事に対して真摯に取り組んできた結果、最高の酪農スペシャル集団になったと自負しています」と胸を張る鈴木組合長。「今年は年間休日100日を目指します」と目標を掲げ、牧場内で一生懸命働くスタッフを笑顔で見つめていた。

300頭収容のフリーストール牛舎

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12頭ダブルのミルキングパーラー

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