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酪農の雇用対策 第3回

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宗谷管内豊富町の有限会社さくら牧場は、地域と牧場をPRする独自の求人サイトを立ち上げて雇用の確保・充実を図っている。今回は、同牧場の岡本健吾代表に酪農の雇用対策について話を聞いた。

求人サイトを立ち上げて人材募集

有限会社 さくら牧場(宗谷管内豊富町)

地域ブランドも雇用に大切

宗谷管内豊富町の有限会社さくら牧場は現在、耕地300haに総頭数550頭(経産牛340頭)を飼養する。従業員確保のために平成12年に経営を法人化。13年には、地域と牧場をPRする同牧場の求人サイトを立ち上げて雇用の確保・充実を図ってきた。
代表の岡本健吾さんは「酪農は年中無休の大変な仕事。だからこそ、心身共にゆとりを持って取り組める体制が必要。規模拡大が進む中で酪農のイメージアップを図り、安定した雇用を確保するためには、役割分担やシフト制を取り入れるなど法人化を進める必要があった」と振り返る。
その上で、同町が抱える雇用問題についてこう熱く語る。「例えば、十勝には『農業』というブランドイメージがある。別海は『酪農王国』というイメージが根づいている。こうした地域のブランドづくりは大切。豊富町も酪農の町だが、なかなかそのイメージが浮かばない。豊富町のブランドづくりのためには、地域の多くの人たちと連携しながら、町に人を呼び込み、この町を愛してもらい、長く住んでもらうために知恵を出し合うことが必要。その延長線上に、この地域や酪農の雇用問題が解決に向かうための手立てがあるような気がする」と。

岡本健吾代表

岡本健吾代表

さくら牧場のホームページ

さくら牧場のホームページ

HPで地域と牧場をアピール

コミュニケーションもばっちり。岡本代表と従業員のお二人

コミュニケーションもばっちり。
岡本代表と従業員のお二人

同牧場のホームページ(http://saqura.co.jp/)では、「さくら牧場で働く」ことの意義について世代別のケーススタディで紹介。また、「北海道とよとみ町ってどんなとこ?」と呼びかけた上で、①実はそんなに田舎じゃない!
②実は隣町だけど、「稚内市」と言う
③最北だけど、実はそんなに寒くない!?
④けしからん酪農家!?
⑤酪農は案外人気の業種らしい
⑥牛が幅をきかせている
―などの項目を設け、地域とさくら牧場について積極的にアピール。同時に、牧場の求人詳細を明示して人材を広く募集している。

同ウェブサイトでの実際の求人効果だが、岡本代表は「従業員からは『思ったより周囲に何もない』とか、『休日にどこかに行こうと思っても何もなく不便』という話は聞くが…」と苦笑した上で、「現在雇用している3人の従業員は、このウェブサイトを見て応募してきた人ばかり。みんな生き生きと働いており、チームワークもいい」と大きな手応えを感じている。

専門知識も学べて勉強になる

今年1月からさくら牧場で働いている北向晋也さんも、この求人サイトを見て応募してきた1人。北向さんは「これまでも別海町の牧場で働いていたが、さくら牧場は代表が獣医師なので、仕事だけでなく、専門的な知識も教えてもらえる。牛のトラブルに対する対応力も身につき、とても勉強になる。今は哺育・育成部門が担当だが、牧場全体の仕事も経験できるので面白い。将来はこうした現場の知識と技術を生かして、酪農業界で貢献できる仕事がしたい」と笑顔で語り、従業員仲間と共に再び牛舎へと向かって行った。

280頭規模のフリーストール牛舎(平成15年増築)

280頭規模のフリーストール牛舎
(平成15年増築)

搾乳は10頭Wのパラレルパーラーで朝5時、夕方3時から開始する

搾乳は10頭Wのパラレルパーラーで
朝5時、夕方3時から開始する

大切なのは従業員の目標

岡本代表は「酪農は3Kというイメージがあるが、最近は酪農の雇用問題はそれだけではないような気がする」と問題提起した上で、「『ただ仕事がないので牧場で働きます』という人が多いのも事実。酪農という仕事を通して、牧場で働く従業員に将来の目標を見つけてもらうことも重要。牧場には酪農の経験者も来れば、初心者も来る。従業員各人の興味ある仕事を優先的に当てながら、経験年数に応じて牧場全体の仕事も覚えてもらう。長く働き続けてもらうためには、単に仕事をさせるのではなく、従業員それぞれが目標を見つけ、夢を持って仕事に取り組んでもらう仕組みが必要である」と強調する。
そんな岡本代表自身、酪農の魅力にはまり込んでしまった1人だ。「酪農はどんどん新しい技術が生まれるし、知れば知るほど奥が深い。その辺に魅力を感じるね。だから、酪農には無限大の可能性がある。また、酪農はほかの農業に比べて技術革新のスピードが速く、とてもアグレッシブな産業だと思う。10年先の酪農を考えると本当にワクワクするね」と言って笑顔を浮かべた。

土・草・牛づくりを再確認

一方、経営面では運動器の障害が多く続いたこともあり、数年前から小型で飼いやすい牛づくりに取り組んできた。特に哺育・育成期の管理には気を使い、早めの骨格と腹づくりのために離乳直後からTMRを給与するなど、「将来働ける牛づくり」に試行錯誤しながらも積極的にチャレンジしている。「牛を健康に飼い、個体乳量を高めるためには、粗飼料の質をもっと上げていかなければといけない。そういう意味では今、土づくり、草づくり、牛づくりの大切さが身に染みて感じている。こうした思いを、いかに現場で実践していくかがなかなか難しい」と言葉をかみしめるように語る岡本代表。
父の金男さんから経営のバトンを受けて4年。さくら牧場の代表として今後、経営面、技術面、人材育成面と地域発展に向けてどんな手腕を発揮していくのか-。その期待は高まる。

堆肥化施設とスラリーストア

堆肥化施設とスラリーストア

育成・乾乳牛舎(平成19年設置) 現在50頭規模の哺育舎を建設中

育成・乾乳牛舎(平成19年設置) 現在50頭規模の哺育舎を建設中

有限会社 さくら牧場の経営概況