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酪農の雇用対策 第7回

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「従業員が生涯を通して安心して働けるように…」と福利厚生に力を入れてきた釧路管内鶴居村の有限会社協栄農場。
2020年5月には最新鋭のロータリーパーラー型搾乳ロボットが稼働する予定で、従業員の労働軽減にも前向きに取り組む。藤澤誠代表(42歳)に、農場と雇用の過去と未来を聞いた。

従業員の福利厚生を重視

有限会社 協栄農場(釧路管内鶴居村)

特別天然記念物タンチョウの生息繁殖地として有名な釧路管内鶴居村。この地で、1964年5月に構成員9戸で設立した有限会社協栄農場。道内の法人経営の先駆け的存在である。当時、総頭数86頭(経産牛49頭)、年間生産乳量166tという規模でスタート。その後、総合牛舎や育成牛舎、バルククーラーなどを整備し、71年には年間生産乳量800tを突破。90年にはフリーストール牛舎(200頭規模)とパラレルパーラー(12頭ダブル)を新設するなど、大規模経営の道を着実に歩んできた。

藤澤誠代表

藤澤誠代表

有限会社協栄農場の全景

有限会社協栄農場の全景

こうした農場の成長過程で特筆されるのが、87年に社会保険・厚生年金に加入するなど早くから従業員の福利厚生を重視した経営に取り組んできたことだ。5代目となる藤澤誠代表は、酪農の雇用問題について「都会の働き手でさえ不足する時代。酪農の労働力確保は非常に難しい」と述べた上で、「従業員が生涯を通して安心して働けるように、当農場では雇用・労災・健康保険や厚生年金などの社会保険のほか、産休・育休制度や退職金制度も設けています。従業員が『この農場で働いて良かった』と思える労働・生活環境の整備には力を入れています」ときっぱりと語る。
現在、協栄農場では耕地面積250haに総頭数510頭(経産牛400頭)を飼養。従業員7人を雇用しており、年間2950tの生乳を生産する。2020年5月には最新鋭のロータリーパーラー型搾乳ロボット(AMR)が稼働する予定だ。

2001年に増築し、300頭規模となったフリーストール牛舎。1頭当たりの平均個体乳量9,900kg、乳脂率3.86%、無脂固形分8.70%

2001年に増築し、300頭規模となったフリーストール牛舎。1頭当たりの平均個体乳量9,900kg、乳脂率3.86%、無脂固形分8.70%

12頭ダブルのパラレルパーラー。搾乳作業は4人が1チーム(搾乳担当は2人)となり、朝・夕それぞれ4時30分から始める

12頭ダブルのパラレルパーラー。搾乳作業は4人が1チーム(搾乳担当は2人)となり、朝・夕それぞれ4時30分から始める

2001年に建てた哺育舎。牛舎の奥には、哺育ロボットを備えたフリーバーンが広がる

2001年に建てた哺育舎。牛舎の奥には、哺育ロボットを備えたフリーバーンが広がる

2001年に建てた哺育舎。牛舎の奥には、哺育ロボットを備えたフリーバーンが広がる

藤澤代表は「パーラーが老朽化していることも要因ですが、若者に魅力ある酪農を提供することも大切。作業の効率化はもちろん、従業員の労働軽減を図り、休日をもっと確保する狙いもある。酪農の従業員も年間休日100日の時代です。そこを目標に、農場をしっかりと整備していきたい」と力強く語る。
協栄農場に勤務して8年目を迎える鳴川成彦さん(28歳)は、「伯父の紹介でこの農場で働き始めました。最初は物言わぬ動物相手の仕事は難しいと思いましたが、今はしっかり手を掛けたら牛が返してくれることが分かり、酪農の仕事が楽しくなってきました」とした上で「将来もこの農場で働きたいし、農場をもっと大きくしたいと思います」との頼もしい言葉に、藤澤代表も目を細めた。「仕事だから厳しいこともあります。ただ、みんながコミュニケーション良く、牛にも人にも優しく接し、明るく笑顔の絶えない農場にしたいですね」。

協栄農場の役職員。「コミュニケーションもいいし、みんな優しいので働きやすい職場ですよ」と鳴川さん(前列左)

協栄農場の役職員。「コミュニケーションもいいし、みんな優しいので働きやすい職場ですよ」と鳴川さん(前列左)

来年には、480頭規模のフリーストール牛舎とロータリーパーラー型搾乳ロボット(24ピット)の新築工事が始まる。藤澤代表は「最新施設の建設に向けて牛の増頭のほか、作業内容の総チェック、そして人材の増員も必要になる」と気を引き締めた上で、「将来は経産牛600頭規模で、年間出荷乳量5000~5500tを目指して頑張りたい」と自らに気合いを入れた。

フリーストール牛舎とバンカーサイロの間に位置する機械庫

フリーストール牛舎とバンカーサイロの間に位置する機械庫

高さ2.7m×幅8m×長さ50mのバンカーサイロ。このほかにもスタックサイロを農場内に数カ所設置している

高さ2.7m×幅8m×長さ50mのバンカーサイロ。このほかにもスタックサイロを農場内に数カ所設置している

牧場の近くにある協栄農場の社宅。来年には社宅をさらに増やす方針で、現在準備中

牧場の近くにある協栄農場の社宅。来年には社宅をさらに増やす方針で、現在準備中