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酪農の雇用対策 第6回

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「魅せる牧場であり続ける」ことを経営理念に掲げるオホーツク管内興部町の株式会社笹岡牧場。「自分がその牧場で働きたいと思える環境をつくれるかどうか」と問い掛ける笹岡拓仁代表(39歳)に、牧場の雇用対策について聞いた。

人も牛も“魅了”させる牧場で人材を確保

株式会社 笹岡牧場(オホーツク管内興部町)

株式会社笹岡牧場の経営理念は「『魅せる牧場』であり続ける」ことだ。①ここで働く誰もが自己実現できる魅力、②牛と共に魅了させる牧場づくり、③訪れる人を魅惑させる環境-。その上で、「酪農を志す人の受け皿を地域と共に築いていく」ことを目標としている。
笹岡拓仁代表は、この理念について「自分がその牧場で働きたいと思える環境をつくれるかどうか。それは牧場経営者の手腕次第。牛にとっても、働く人にとっても、訪れる人にとっても魅力的な牧場であること。牧場に魅力がなければ人は集まらないし、逆にそうした環境を整えれば経営にも必然的に反映されます」と力強く語る。

牧場全体が効率的できれいにレイアウトされている笹岡牧場。訪れる人々が心安らぐ空間が広がっている

牧場全体が効率的できれいにレイアウトされている笹岡牧場。訪れる人々が心安らぐ空間が広がっている

笹岡拓仁代表

笹岡拓仁代表

また、同牧場では従業員がどんどん手を上げて挑戦できる環境も整えている。頑張った分はしっかり評価し、給与や手当に反映させる。毎日の残業は2~3時間程度あるものの、時間外手当は1分単位で支給するほか、毎月2連休、3連休を取ることも可能なので、メリハリのある働き方ができるのも特長だ。
「自覚、責任、自立を促すため、スタッフがやりたいと思うことは、できるだけチャレンジさせるようにしています。トップダウンだとやらされている感があるので、スタッフのやる気を引き出す形を常に考えています」と笹岡代表。「その代わり、クミカンの状況などもすべてスタッフに見てもらいます。やりたいことをやって、収支がどう増減したのかを理解してもらうことは経営を考える上でとても重要」と語る。もちろん、こうした体制を確立するために、毎朝晩のミーティングと月1回の全体会議で情報の共有化を図ることも欠かさない。

スタッフのコミュニケーションも良好。休日が多いため、全員が顔を合わせる機会は月1回の全体会議ぐらいだという

スタッフのコミュニケーションも良好。休日が多いため、全員が顔を合わせる機会は月1回の全体会議ぐらいだという

事務所のホワイトボードに貼られた牧場のデータ。月1回の全体会議では、それぞれの担当業務についての課題と改善点について発表して情報の共有化を図っている

事務所のホワイトボードに貼られた牧場のデータ。月1回の全体会議では、それぞれの担当業務についての課題と改善点について発表して情報の共有化を図っている

目標を達成したら社長賞を授与する。これも、スタッフのやる気を引き出す一案

目標を達成したら社長賞を授与する。これも、スタッフのやる気を引き出す一案

同牧場では現在、耕地140haに総頭数272頭(経産牛155頭)を飼養。2004年に120頭規模のフリーストール牛舎(その後、160頭規模に増築)を新設。搾乳ロボット1台とアブレストパーラー(8頭)を併設しており、17年度の生乳出荷乳量は約1600t。従業員は5人を雇用している。
同牧場に勤務して9年になる場長の古山雄一さん(37歳)は「ここの牧場は計画性があり、余裕を持った仕事ができます。現在は作業全般を担っていますが、今後は経営面も見てほしいと言われているのでやりがいを感じますね」と笹岡牧場の魅力を語る。その上で、将来について「この牧場と共に自分も成長していきたいし、経営内容をより良くすることに尽力したいです」と気合いを入れた。

2004年に新設した120頭規模のフリーストール牛舎は、その後160規模に増築した

2004年に新設した120頭規模のフリーストール牛舎は、その後160規模に増築した

8頭用のアブレストパーラー

8頭用のアブレストパーラー

牛舎新築時に設置した搾乳ロボット

牛舎新築時に設置した搾乳ロボット

哺育・育成舎。生まれた子牛は預託しないで、すべて牧場内で育てる

哺育・育成舎。生まれた子牛は預託しないで、すべて牧場内で育てる

バンカーサイロは440t×6基を設置

バンカーサイロは440t×6基を設置

1頭当たり平均乳量は1万700kg、乳脂率3.89%、無脂固形分率8.93%、体細胞数10万、細菌数2000個以下という牛群

1頭当たり平均乳量は1万700kg、乳脂率3.89%、無脂固形分率8.93%、体細胞数10万、細菌数2000個以下という牛群

酪農の働き手不足が問題となって久しいが、「経営者はまず夢を語らなければいけない。そして、その夢を実現させるための努力を続けること」と語る笹岡代表。「周囲の人から『牧場のスタッフっていいよね』といわれるように、もっともっと酪農を魅力あるものにしていきたい」と優しい笑顔を浮かべた。笹岡代表の夢は、まだまだ大きく広がっている。

キング式牛舎をイメージした社員食堂を建設中。今年8月に完成予定。笹岡代表の妻(あゆみさん=36歳)が食事を用意する。「新しい農村女性の形を創造していきたい」と笹岡代表

キング式牛舎をイメージした社員食堂を建設中。今年8月に完成予定。笹岡代表の妻(あゆみさん=36歳)が食事を用意する。「新しい農村女性の形を創造していきたい」と笹岡代表