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酪農の雇用対策 第5回

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十勝管内陸別町の有限会社サンライズは、「年間休日100日以上」を掲げてリクルート活動を展開している。「従業員が安心して働ける労働環境と待遇」を重視する同牧場の古田英一社長(57歳)に、その背景などについて聞いた。

年間休日100日以上で無理なく働く

有限会社サンライズ(十勝管内陸別町)

「日本一寒い町」といわれる十勝管内陸別町で現在、耕地面積200haに乳牛600頭(経産牛500頭)と肉牛・F1牛200頭を飼養する有限会社サンライズ。同牧場の雇用に関する一番の特長は、「年間休日100日以上」を掲げてリクルート活動を行っていることだ。
古田社長は、「牛も人も心地良く過ごせるように、またやりがいを持って楽しく働けるように、当牧場では従業員が安心して働ける労働環境と待遇を整えています」と胸を張る。この言葉が示す通り、同牧場では休日は週休2日(月7~9日)のシフト制を採用。待遇面では社会保険や傷害保険はもちろん、年1回の昇給、年2回の賞与(3カ月分)、住宅手当、家族手当などに加え、5年勤務のスタッフには海外研修の機会も提供し、長く、楽しく仕事を続けられる体制づくりに力を入れている。

古田英一社長

古田英一社長

新年会での一コマ。従業員同士の良好な関係に、こうした飲みのコミュニケーションも一役

新年会での一コマ。
従業員同士の良好な関係に、こうした飲みのコミュニケーションも一役

古田社長が就農した1979年当時、実家の酪農経営は乳牛30頭を飼養する程度だった。しかし、「家族(妻と子供4人)を養ってくためには規模拡大が必要だった」と語るように、95年には120頭規模のフリーストール牛舎と12頭シングルの手造りパーラーを新設。97年には経営を法人化し、有限会社サンライズを設立した。その後も牛舎や諸施設を充実させ、2008年に肉素牛生産を開始。さらに、11年には600頭規模のフリーストール牛舎や50ポイントのロータリーパーラーを導入するなど規模拡大の道を着実に歩んできた。

600頭規模のフリーストール牛舎の外観

600頭規模のフリーストール牛舎の外観

2011年3月に稼働した50ポイントのローラリーパーラー

2011年3月に稼働した50ポイントの
ローラリーパーラー

ただ、古田社長は「雇用を深刻な問題として捉えたことはない」ときっぱりと語る。「当牧場では法人化してから21年間、ずっと人材を募集しているという情報を発信しています。それは人材を確保してから規模拡大を行うためです。多くの牧場は規模拡大をしてから人材を探す。だから人手不足で困る。悪循環ですよね」と説明する。
だが、人を確保できたとしても、その人材が長続きするという保証はない。「だから、従業員が安心して働ける労働環境と待遇が重要なのです」と古田社長は繰り返し強調する。「牛が好き、自然が好き、酪農の仕事が好きだといっても、人間だから嫌になる時だってある。そうした時に、どうやって従業員の心をリフレッシュさせてあげられるか。仕事をする時は仕事をする。遊ぶ時は遊ぶ。連休を取って自分の趣味に取り組んだり、旅行に行くなど気分転換する時間も必要です。それが仕事の活力にもつながる」と力説する。
また、人を雇用する前提条件として最低3泊4日の体験実習を実施。実際に作業を体験してもらい、酪農の仕事に合わない人には採用をはっきりと断る。「ミスマッチは個人にも会社にも不幸なことですからね」と古田社長。
牛はもちろん、同牧場で働く人、同牧場にかかわる人、すべての幸せのために努力することを経営理念とするサンライズ。古田社長の経営者としての才覚が、牛も人も働きやすい環境を生み出し、牧場内はたくさんの笑顔であふれていた。

「酪農経営は基本を踏み外さないこと」と古田社長は強調する

「酪農経営は基本を踏み外さないこと」
と古田社長は強調する

「牛たちが喜ぶことをやれば、必ずリターン(収入)も大きくなる」と古田社長

「牛たちが喜ぶことをやれば、必ずリターン(収入)も大きくなる」と古田社長

哺乳ロボットも導入しているが、「最後は人間が手を掛けることが大切」と古田社長

哺乳ロボットも導入しているが、「最後は人間が手を掛けることが大切」と古田社長

牛舎や諸施設が効率よくレイアウトされる有限会社サンライズの牧場全景

牛舎や諸施設が効率よくレイアウトされる有限会社サンライズの牧場全景