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No3 気象情報「カウダス」を活用しよう

(一社)家畜改良事業団 情報分析センター 部長相原 光夫

北海道胆振東部地震により、被害を受けた方々には心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い復興を祈っております。
今回は夏季の長雨など、北海道内の気象に関する情報を紹介します。既にご承知のことも多いかもしれませんが、いま一度ご確認いただければ幸いです。

1.牛群検定気象情報「カウダス」

乳用牛群検定全国協会のホームページでは、全国各地の気象情報を紹介しています。「カウダス」とは、わが国が世界に誇る気象庁の最先端気象観測システム(アメダス)と乳牛(カウ)を合わせた造語です。インターネット上で「カウダス」と検索していただければ、誰でも閲覧することができます。
カウダスは、あなたの牧場から最も近くに設置されている気象庁アメダスの気象情報です。現在、アメダスは全国に約800カ所設置されており、あなたの牧場からは平均で10kmほどの距離に設置されています。牛舎そのものの気温ではありませんが、十分に活用できるものです。
カウダスは、全国の地区別に計算した気象情報を毎月公表しています。テレビなどの気象情報は人間が住んでいる所を中心に集計・公表されますが、カウダスの計算方法は図1のとおりで、言わば「牛がいる所」を中心に集計したものです。カウダスは酪農用の気象情報で、通常の気象情報とは異なります。

図1 牛群検定気象情報カウダス

図1 牛群検定気象情報カウダス

2.北海道の気象の特徴

北海道の気象は、一般に冷涼で降水量が少ないのが特徴で、図2に示したように海流に大きく影響されます。本年は道東(十勝)、道北(網走)、道央(石狩)のカウダス(図3~図5)に示したように、7月、8月の降水量が多かったため、飼料作物の生育や刈り取りに大きく影響しました。

図2 北海道の海流

図2 北海道の海流

図3 十勝

図3 十勝

図4 網走

図4 網走

図5 石狩

図5 石狩

(1)太平洋側

図3に、太平洋側の代表地区として十勝地区のカウダスを示しました。太平洋側は、寒流の千島海流(親潮)が流れているので一般的に冷涼で、冬季の降水量が少ないことが特徴です。しかし、本年7月の降水量は188.4ミリと昨年の2.6倍もの降水があったことを示しています。

(2)オホーツク海側

図4に、オホーツク海側の代表地区として網走地区のカウダスを示しました。オホーツク海側は、夏季は暖流の宗谷海流の影響とフェーン現象により、道内で最も高い気温を記録することも珍しくありません。しかし、冬季には宗谷海流は弱まり、寒流の東樺太海流の影響が強くなることから流氷に代表されるような寒さを記録します。また、年間を通じて最も降水量が少ない地域でもあります。

(3)日本海側

図5に、日本海側の代表地区として石狩地区のカウダスを示しました。暖流の対馬海流の影響により、冬季の降雪量が多いことが特徴です。夏季は海流の影響により、夜間の温度が比較的高く、昼と夜の温度差が小さいことが特徴です。

3.寒冷対策

寒冷対策として重要なのは、まず子牛の哺育管理になります。一般に気温が13℃以下になると、寒冷ストレスを受けるようになります。図3~図5の道内各地区で、最低気温の平均は夏季に13℃を超えるものの、最低気温の最低(MIN)はどの地区も13℃を下回ります。これはオホーツク海高気圧が発達すると、夏季であっても冷涼な大気が流れ込むためといわれています。すなわち、北海道では夏季においても子牛の寒冷対策は気を抜けないことを意味します。よく言われている寒冷対策では、①清潔で十分な敷料 ②すきま風の防止 ③ジャケットの着用―などが挙げられます。産まれてすぐの初乳給与は言うまでもありません。
搾乳牛についても、寒冷ストレスを受けることが知られています。水分含量の高い飼料や冷水は、それだけでも体温を下げ、乳量が減少する要因となります。また、給水設備やバーンクリーナーの凍結にも留意する必要があります。

4.暑熱対策

北海道でも夏季は25℃以上の「夏日」、30℃を超える「真夏日」、35℃を超える「猛暑日」があるのは図3~図5に示した通りです。24℃を超えると乳牛の生乳生産に影響が出るといわれていますので、北海道でも暑熱対策が必要となります。
道内各地は図2に示したような海流であるため、春から夏にかけて各地域でフェーン現象が生じ、普段は冷涼なオホーツク海側でも最高気温を記録することがあります。このようなときに注意しなければならないのは、日中の気温もさることながら、夜間の気温になります。夜間の気温が25℃以上あれば「熱帯夜」と言いますが、乳牛の場合は夜間の気温が23℃以上となると乳量減少がさらに大きくなり、回復に時間を要するようになります。これは日中受けた暑熱ストレスを夜間に回復できないためで、いわゆる「夏バテ」の引き金になります。夜間の気温が下がりづらい日本海側や、フェーン現象などで熱帯夜が予報される場合には24時間送風など、夜間の暑熱対策が必要になります。

5.温度の管理

カウダスを利用し、各対策の時期にめどを付けるようにしてください。牛舎内に温度計を設置することも必要ですが、夜間など牛舎に人のいない時間帯の温度も管理できるように、最高最低温度計のような多機能な温度計を設置すると良いでしょう。

6.THI指数

暑熱対策を講じるときに、先述したような温度だけでなく、湿度も併せて考慮する必要があります。THI指数は、温湿度指数または不快指数と訳される指標で、図6に示したように温度と湿度から暑熱対策の目安を知ることができます。酪農では、一般的にTHI指数が72以上で暑熱の影響を受けるといわれています。この説によれば、先に示した24℃以上での乳量の低下とは、湿度70%程度のときの目安であることになります。

図6 THI指数(温湿度指数 不快指数)

図6 THI指数(温湿度指数 不快指数)

北海道の主な地域の湿度を図7に示しました。道東、道北における夏季では、寒流の千島海流の影響により霧が発生することが多く、湿度が高いことが特徴です。すると、道東、道北の夏季に湿度が80%程度となるとすれば、図6のTHI指数で考えると、72以上となる気温は23℃となり、暑熱対策で一般的にいわれている目安の24℃より1℃低いことになります。これは冷涼な北海道では、都府県より低めの気温で暑熱対策が必要であることを示します。

図7 北海道内の湿度

図7 北海道内の湿度

なお、各地の研究機関などによると、THI指数での暑熱対策の目安は68や70といった諸説もあります。もし、そうであれば、夏季湿度の高い北海道内の暑熱対策はさらに低温で行う必要があることが示唆されます。