Gloabal site

お問い合わせ

酪農経営お役立ち情報

牛群検定情報を飼養管理に活かそう!

印刷する

No6 搾乳ロボットでの検定と飼養管理の注意点

(一社)家畜改良事業団 情報分析センター 部長相原 光夫

搾乳ロボットが急速に普及し、関心が高まっています。当然ですが、搾乳ロボットでも牛群検定を行うことができます。そこで今回は、北海道内での搾乳ロボットの検定成績や、飼養管理の注意点などについて紹介したいと思います。

1.検定実施状況

2019年2月時点で、道内で搾乳ロボットを利用している牛群検定農家は219戸、頭数は3万3,946頭です。飼養規模は平均155頭ですが、50頭程度での導入事例もあるようです。
搾乳ロボット農家の検定成績の特徴は、何といっても乳量が高いことにあります。図1に示した通り、搾乳ロボットによる搾乳が行われた場合の305日間乳量は1万818kgであり、通常の2回搾乳が9,719kgなので、1,000kg以上の差が生じています。

図1 北海道における305日乳量の推移

図1 北海道における305日乳量の推移

高泌乳量になると繁殖が悪化するという人が多いのですが、図2に示した通り、搾乳ロボット農家の分娩間隔は422日と北海道平均の426日を4日間下回っています。

図2 北海道における分娩間隔の推移

図2 北海道における分娩間隔の推移

1日当たりの検定成績を年間平均したものが図3です。1日当たりの乳量差は5kgにも及びます。また、搾乳ロボットの開発当初は体細胞数が課題になることもありましたが、乳頭センサーの精度が向上したことから、現在ではむしろ搾乳ロボットの方が体細胞数は良好という結果になっています。しかし、乳成分の中では乳脂率がわずかながら低いことが挙げられます。そのほかの乳成分は、北海道平均と比較して大きな差異となっていません。

図3 北海道における年間平均(2018年1~12月)

図3 北海道における305日乳量の推移

2.検定成績の活用

搾乳ロボットでも検定成績表の活用方法に大きな違いはありません。以下では、搾乳ロボットならではの特徴を紹介します。

(1)搾乳回数

搾乳ロボットで乳量が増える大きな要因は搾乳回数にあります。頻回搾乳することで泌乳ホルモンであるプロラクチンが増加し、乳腺細胞が増加するため、乳量が増加するといわれています。特に泌乳初期のプロラクチンは、その後の泌乳持続性に強く影響します。
しかし、闇雲に搾乳回数を増やしてはいけません。以前はロボットで5、6回搾る人もいましたが、現在は3回程度とされています。これは搾乳回数が5、6回と増えてしまうと搾乳間隔が短くなり、FFA(遊離脂肪酸)が増加する原因となり得るからです。FFAは風味異常、ランシッドの発生につながります。
搾乳回数については、牛群検定では搾乳ロボット用には表示していません。搾乳ロボットから出力されるレポートを確認するようにしてください。

(2)PMR飼料(パートリーミックスドレーション=粗飼料主体の基礎混合飼料)

搾乳ロボットの飼養管理で最も重要なのがPMR飼料です。普通の農家ではTMR飼料を用いることが一般的ですが、搾乳ロボットでは濃厚飼料を搾乳ロボットのユニット内で給餌するため、牛舎で給餌する飼料はその分の濃厚飼料を差し引いたPMRとする必要があります。従って、搾乳ロボットを導入する際には、TMRセンターを利用している農家では、その協力は不可欠となります。
さらに、PMRでは濃厚飼料を抑えている分、分離による選び食いや嗜好性の課題が発生しやすいといえます。その意味では、搾乳ロボットこそ良質粗飼料による適正切断長や、加水などによる十分な攪拌が必要となります。特に搾乳ロボットでは、前述したように乳脂率が若干低めとなるため、特に夏季における粗飼料の食い込み不足や暑熱対策が重要となります。
検定成績表には、飼料給与の検討材料が多数あります。P/F比やMUNなどはその代表格ですが、最近では乳中ケトン体情報がフィードバックされるようになりました。これは0.13mM/L以下の場合、栄養不足が考えられ、症状がなくともケトーシスの予備軍と考えられます。

(3)繁殖

搾乳ロボットでも繁殖への取り組みは変わりません。繁殖を改善するためには、一般に三つの取り組みが必要となります。①人工授精などの技術的改善②受胎率向上のための改善③適切なVMP注)による分娩初回授精の改善-です。①は獣医師や人工授精師の取り組みとなりますが、②と③は酪農家によるところが大きく、前述したPMR飼料などの飼養管理を整えたり、発情発見のための観察を行うことが基本となります。牛群検定成績表では、分娩後の初回授精を促すための情報や、発情発見のための情報などさまざまな情報提供をしています。ぜひともご活用していただきたくお願い致します。
さて、搾乳ロボットでは、多頭数飼養であることも多いので、各種補助具を利用することが勧められています。歩数計などの活動量を知るセンサーや、黄体ホルモンを知るセンサーなどが実用化されて成果を挙げており、前述した通り、分娩間隔などは北海道平均より短縮化されています。
注)授精待機期間、分娩後における子宮回復などのための任意の空胎期間

3.搾乳ロボットの検定方法

搾乳ロボットでの牛群検定を「自動検定」と言います。「自動検定」では、検定員は検定開始の最初と最後にだけ立ち会い、搾乳中は検定員も農家も立ち会う必要はありません。搾乳ロボットが自動的に搾乳を行い、その乳量データは搾乳ロボットを管理するパソコンに自動的に蓄積されます。検定終了時にそのパソコンから乳量データを取得します。非常に省力的で簡易化された検定方法といえます。
また、搾乳ロボット農家でも、従来の搾乳施設を残している例は多く、増頭やロボットに不慣れな牛、乳房炎などの病牛用などに活用されています。こうした場合でも、従来の搾乳とロボット搾乳のどちらの牛も同時に検定することが可能です。

4.自動サンプリング装置

自動検定で最も特徴的なのは、図4に挙げた「自動サンプリング装置」という機械を利用することです。これは無人となる搾乳において、牛群検定用の乳成分サンプルを自動的に取得する機械です。それぞれのメーカーが搾乳ロボットに合わせて自動サンプリング装置を準備しています。
自動サンプリング装置は搾乳ロボットに取り付けることで、設定に従い無人で40~80本程度のサンプルを採取します。規定の本数を超える時は、農家もしくは検定員が自動サンプリング装置を再度セットして必要な本数を採取します。
サンプリングする本数は時間で制約されています。以前は、サンプリング期間(検定実施)は24時間以上とされていたのですが、現在は12時間以上と緩和されています。もし、50頭程度を搾乳ロボットで検定している場合、1日1頭当たり平均3回搾乳するとすれば、50頭×3回×12時間/24時間=75本のサンプルが必要となります。夏季はどうしてもサンプルが腐敗しやすい、夜間(夕方~朝)に検定を行ってもよいでしょう。

図4 牛群検定を行える機種一覧

図4 牛群検定を行える機種一覧